1.蓄電池の容量計算方法とは?AhとWhの違い
蓄電池の容量は次の方法で計算できます。
・使用する家電をリストアップする
・「家電の消費電力(W)×使用時間÷1,000」で家電の電力消費量(kWh)を計算する
例えば、消費電力100Wの冷蔵庫を24時間動かしたときの電力消費量は2.4kWhです。電子レンジや洗濯機、エアコンなど使用頻度が高い家電の電力消費量を合わせれば、蓄電池のおよその必要容量を判断できます。
また、電化製品の容量を示す単位として「Ah」がありますが、こちらは主に小型機器に使われる単位です。家庭用蓄電池の容量は家電の消費電力(W)に合わせているため、AhではなくkWhで記載されていることが多いです。AhとWhの違いは次のとおり。
単位 |
意味 |
機器の記載例 |
● Ah(アンペアアワー) ● mAh(ミリアンペアアワー) |
1時間で流せる電流の容量 |
スマホやモバイルバッテリーなど |
● Wh(ワットアワー) ● kWh(キロワットアワー) |
1時間の電力消費量 |
家庭用蓄電池やポータブル電源など |
※mAh:Ahの1/1,000
※kWh:Whの1,000倍
なお、中には容量をAhで記載している蓄電池もあります。Whに変換する際は、以下の例のようにAh×W(電圧)で計算可能です。
・100Ah×3.7V=370Wh
蓄電池の容量がkWhで記載されていれば、上記の数値を1,000で割った0.37kWhが最終的な数値です。計算するときの参考にしてください。
関連人気記事:蓄電池の容量の決め方は3つ!容量以外の注意点や目安の計算方法も解説
2.【3つのポイント】家庭用蓄電池の容量の決め方

家庭用蓄電池の容量の決め方には3つのポイントがあります。
・電気使用量を計算する
・太陽光発電システムの発電量を計算する
・非常用電源として必要な容量を計算する
それぞれ詳しく解説します。
①電気使用量を計算する
容量を決めるときは、まず自宅の電気使用量を計算しましょう。電気使用量は一般的にkWhで記載されており、大まかな使用量は請求書で把握できます。時間帯や曜日別の使用量は各電力会社のホームページで確認可能です。
なお、電気使用量を計算する際は、エアコンや暖房機器の使用時間が増える季節に注意してください。夏冬の使用量に合わせなければ、蓄電池の容量が足りなくなるかもしれません。
住んでいる地域の気候や使用する家電によって、必要な容量は変わります。正確な電気使用量の把握が蓄電池の容量を選ぶコツです。
②太陽光発電システムの発電量を計算する
太陽光発電システムの発電量から、家庭用蓄電池の容量の目安を計算できます。太陽光発電システムの一般的な容量に基づいて、容量を計算してみましょう。
年間の発電量の計算式:システム容量×損失係数×年間の平均日射量×年間日数
・太陽光発電システムの容量:3kW
・発電の損失係数:0.73
・東京の年間の平均日射量:3.74(kWh/㎡/日)
・3×0.73×3.74×365=約3kWh
汚れや気候によって太陽光パネルの発電効率は変わるため、効率低下を考慮して0.73の損失係数を計算式に含めます。計算の結果、容量3kWの太陽光発電システムの年間発電量は約3kWhとわかりました。
地域ごとの年間平均日射量は、国立研究開発法人「NEDO」にまとめられています。なお、すでに太陽光発電システムを導入していて、蓄電池を追加導入する場合は、現在の発電量をモニターで確認しましょう。
参考:国立研究開発法人NEDO「日射に関するデータベース:日射量データベース」
③非常用電源として必要な容量を計算する
家庭用蓄電池を導入するなら、非常用電源としての容量も必要です。
太陽光発電システムには停電時でも動かせる「自立運転機能」があります。しかし、悪天候ではほとんど発電できないため家電を動かすことはできません。蓄電池に電力を貯めておけば、発電できない日でも家電を動かせます。
4人世帯で冬に停電したケースを想定して、およその必要な容量を計算しました。
項目 |
1日のおよその消費電力量 |
電気ケトル(850W) |
約0.85kWh(1時間) |
電気毛布(55W) |
5.28kWh(24時間×4人) |
電子レンジ(1,000W) |
1.5kWh(30分×3食) |
スマホ(15W) |
0.06kWh(1時間×4人) |
テレビ(50W) |
0.15kWh(1時間×3回) |
照明(10W) |
0.24kWh(6時間×4人分) |
合計 |
8.08kWh |
食事や体調管理に最低限必要な家電で計算した結果、1日に約8kWhの容量が必要とわかりました。ただし、冷蔵庫や電気ストーブ、エアコンなどを含めればもっと多くの容量が必要です。
なお、家電の性能によって消費電力量は変わります。非常用電源の容量を計算するときは、自宅にある家電の消費電力を確かめましょう。
3.世帯人数・地方別!使用電力量から見る家庭用蓄電池のおすすめ容量
世帯人数・地方別の使用電力量から、家庭用蓄電池のおすすめ容量を解説します。容量の決め方に迷っている人は参考にしてください。
● 世帯人数別おすすめ容量
単身世帯は約7kWh、2人以上の世帯は約13kWhの容量が必要です。
【(月ごとの電気代÷電力の目安単価31円/kWh)÷30日】の計算式でそれぞれの電力量を算出しています。
・単身世帯:約217kWh/月÷30日=1日約7.2kWh
・2人以上の世帯:約396kWh/月÷30日=1日約13.2kWh
参考:総務省統計局「家計調査 家計収支編 単身世帯 」「家計調査 家計収支編 二人以上の世帯 」
参考:公益社団法人 全国家庭電気製品公正取引協議会「よくある質問 Q&A」
とはいえ、上記の数値は平均的な消費電力量の一例です。あくまで容量を計算するときの目安にしておきましょう。
● 地方別おすすめ容量
年間消費電力量から1日の消費電力量を計算し、地方別におすすめの容量を紹介します。
地方名 |
年間消費電力量(kWh) |
1日の消費電力量(kWh)
|
家庭用蓄電池のおすすめ容量目安(kWh) |
北海道 |
3,719 |
10.2 |
10 |
東北 |
4,872 |
13.3 |
13 |
関東甲信 |
3,767 |
10.3 |
10 |
北陸 |
5,833 |
16 |
16 |
東海 |
4,286 |
11.7 |
12 |
近畿 |
4,044 |
11.1 |
11 |
中国 |
4,853 |
13.3 |
13 |
四国 |
4,872 |
13.3 |
13 |
九州 |
4,433 |
12.1 |
12 |
沖縄 |
3,842 |
10.5 |
11 |
北陸地方の消費電力量が多いのは、部屋数の多さに合わせて電化製品が増えることが原因のようです。逆に北海道の消費電力が控えめなのは、暖房機器が灯油メインであることに加えて、夏は涼しく他の地域ほど冷房が必要ないからと考えられます。
地域の気候や住宅の事情に合わせて、蓄電池の容量を計算しましょう。
4.家庭用蓄電池の容量別の価格目安一覧

家庭用蓄電池の価格目安を、容量別にまとめました。
容量 |
蓄電池の価格目安(kWh) |
工事費用の目安(kWh) |
5kWh未満 |
15万円 |
1.6万円 |
5kWh~10kWh |
10.6万円 |
1.3万円 |
10kWh以上 |
10.7万円 |
0.6万円 |
参考:経済産業省「家庭用及び業務・産業用蓄電システムに関する課題整理」
容量が増えるほど、蓄電池の導入費用は安くなる傾向にあります。なお、低価格で購入できるのは、補助金事業に登録した事業者のみです。例えば「子育てエコホーム支援事業(※)」を活用するなら、国土交通省のホームページから登録事業者を検索して、施工を依頼しなければなりません。
※子育て世代への省エネ設備導入支援制度。2024年の申し込みは終了。
家庭用蓄電池のコストを抑えたい人は、補助金制度を利用できるか確認しましょう。
関連人気記事:蓄電池の価格はどのくらい?お得な買い方とおすすめの製品を紹介
5.家庭用蓄電池を選ぶときの3つの注意点
家庭用蓄電池を選ぶときは、コストや容量不足に悩まないために、以下3つの点に注意する必要があります。
・実効容量で決める
・家電の電圧を考慮する
・補助金制度を活用できる蓄電池を選ぶ
順番に見ていきましょう。
①実効容量で決める
蓄電池はカタログ上の「定格容量」ではなく、実際に使える数値の「実効容量」で決めなければなりません。性能の劣化などを考慮して、容量が上限まで達しないようにあらかじめ制限されているためです。
実効容量は定格容量の70~90%ほどになり、例えば5kWhの蓄電池なら4kWh前後になります。定格容量の0.8倍が実効容量の目安になると覚えておいてください。
参考:国土交通省「住宅における蓄電・蓄熱された電力・熱の評価の基盤整備」
②家電の電圧を考慮する
蓄電池の容量は、家電の電圧が種類ごとに変わる点を考慮する必要があります。
例えば、オール電化住宅で定番のIH調理器やエコキュートの電圧は200Vのため、100Vの家庭用蓄電池では使えません。停電時に蓄電池では使えない家電が出てしまいます。
とはいえ、オール電化住宅で使われるようなIHクッキングヒーターなどの家電を除けば、基本的に100Vの蓄電池で対応可能です。蓄電池の導入コストを抑える方法として、数万~数十万円で購入できる100V対応のポータブル電源が選択肢に入ります。
ポータブル電源は、持ち運びできる安価な蓄電池装置。家庭用蓄電池と比べて、本体価格の安さ以外に以下の利点があります。
・メンテナンス不要
・外出先に持ち運び可能
・設置工事費が不要
一例として、Jackery(ジャクリ)のポータブル電源はAC電源(コンセント)とUSBポートを備えています。自宅の冷蔵庫や電子レンジ、外出先でのスマホ充電や扇風機・電気毛布などの使用が可能です。 予算に余裕がない場合は、100Vの家庭用蓄電池の代わりにポータブル電源を導入しましょう。
③補助金制度を活用できる蓄電池を選ぶ
購入費用を抑える方法として、補助金制度を活用できる蓄電池がおすすめです。例えば、兵庫県高砂市では、以下の条件を満たすと補助金が支給されます。
・市税をきちんと納めている
・リース品や中古品以外の新品を設置する
・2024年3月1日~2025年7月28日までの間に設置する
参考:高砂市役所「令和6年度高砂市太陽光発電・家庭用蓄電池システム設置補助金制度」
地域によって補助金の条件は変わるので、蓄電池を安く購入したい人は各市町村のホームページを確かめてください。「家庭用蓄電池 地域名」で検索すると、地域ごとの条件を調べられます。
関連人気記事:家庭用蓄電池は必要?仕組みから種類ごとの特徴、価格相場の情報まで解説
6.設置工事不要!携帯できるJackeryの蓄電池を紹介
家庭用蓄電池は、設置スペースや予算の確保、業者とのやり取りなどに時間とお金がかかるのがネックです。しかし、ポータブル電源なら設置工事の手間と費用がかからず、本体価格も安いため低コストで導入できます。一例として、Jackery(ジャクリ)のポータブル電源の特徴を見ていきましょう。
・2~5年間の無償修理サービス
・最長10年以上のバッテリー寿命
・使い心地を補助するグッズの提供
・利用者の98.9%が周りに勧める満足度
・創立13年で500万台オーバーの販売実績
Jackery(ジャクリ)のポータブル電源は高出力・大容量が強みです。例えば「Jackery ポータブル電源 2000 New」は、電子レンジやドライヤーなどの電力消費が激しい家電を使うことができ、3~5人の世帯で停電した際に約3日間の非常用電源として活躍します。
家庭用蓄電池は自宅での利用に限られるのが難点。一方でポータブル電源は、アウトドア環境で小型冷蔵庫を使えたり、避難所で電気毛布や扇風機を使えたりと用途が豊富です。ソーラーパネルとのセットなら、外出先や停電時の状況でもポータブル電源を充電できます。
設置工事のコストを抑えたい人や蓄電池を自宅以外でも使いたい人は、Jackery(ジャクリ)のポータブル電源をお試しください。
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7.蓄電池の容量についてよくある質問
蓄電池の容量についてよくある質問をまとめました。
● 4人家族で必要な蓄電池の容量は?
4人家族で必要な蓄電池の容量は8kWh前後です。ただし、太陽光発電システムの容量や家電の使用状況によって必要な容量は変わります。
例えば、福井県は大きな住宅に合わせて家電が多くなりがちなため、日本1位の電力消費量となっています。蓄電池の容量を決めるときは、住宅の電力消費量に合わせましょう。
● 10kWhの蓄電池はどれくらい使える?
10kWhの蓄電池で使える家電の稼働時間をまとめました。
家電の種類 |
稼働時間 |
冷蔵庫(200W) |
50時間 |
エアコン(1,000W) |
10時間 |
テレビ(50W) |
200時間 |
炊飯器(500W) |
20時間 |
扇風機(30W) |
333時間 |
上記の稼働時間はあくまで目安で、家電の性能によって稼働時間は変わります。
なお、蓄電池は家電の電圧に合わせることが重要です。100Vのみ対応した蓄電池はIH調理器などを動かせないため、普段使う家電の電圧をあらかじめ把握しておきましょう。
● 蓄電池の容量は最大でどのくらい?
2025年1月時点での家庭用蓄電池の最大容量は、ニチコンが販売している「ESS-U4シリーズ」の16.6kWhです。
なお、大容量を備えていても、家電の使用状況に合わなければ出費が無駄になります。自宅の電力消費量に合った容量蓄電池を選びましょう。
また、家庭用蓄電池は太陽光パネルとの併用が前提で、導入費用がさらに130万円ほど必要です。予算を抑えつつ蓄電池を使いたい人には、数万~数十万円で購入できるポータブル電源とソーラーパネルのセットをおすすめします。
● 家庭用蓄電池の容量上限は消防法で決められているの?
家庭用蓄電池の容量上限は、消防法で決められていません。ちなみに20kWhを超えると消防機関への届け出が必要ですが、2025年1月時点で家庭用蓄電池の最大容量は16.6kWh。容量上限は気にしなくても問題ないでしょう。
参考:一般社団法人日本電機工業会「蓄電池設備に関する消防法令の改正について」
まとめ
家庭用蓄電池の容量を決めるときは、6つのポイントが重要です。
・電気使用量を計算する
・太陽光発電システムの発電量を計算する
・非常用電源として必要な容量を計算する
・実効容量で決める
・家電の電圧を考慮する
・補助金制度を活用できる蓄電池を選ぶ
この記事を参考にすれば、適切な容量の家庭用蓄電池を購入できます。とはいえ、太陽光発電システムと合わせて予算が200万円を超える場合もあり、高額な費用は大きなネックです。
家庭用蓄電池の役割はポータブル電源とソーラーパネルのセットで、ある程度代用可能です。家庭用蓄電池よりも圧倒的に安く、工事不要で持ち運べるメリットがあるポータブル電源を使ってみましょう。
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