冬キャンプで熱燗を楽しもう!

ポータブル電源と熱燗

冬のキリリと冷たく澄んだ空気の中でいただく熱燗(あつかん)は、体も心もほっこりとあたためてくれます。日本酒を温めるだけで簡単にできる熱燗ですが、その世界は意外と奥深いもの。今回は東京・渋谷で2軒の燗酒専門店を営む、酒場文化研究所所長の坂嵜 透(さかざき とおる)さんに、Jackery ポータブル電源 1500とIH調理器を使って、キャンプでいただく熱燗の付け方や楽しみ方を伺いました。

熱燗に合うお酒とは

温めることで、日本酒のもつ甘みやふくよかさを引き出し、旨みをふわりと際立たせる熱燗。「熱燗は酔い方が心地よく、リラックス効果があるように感じます」と話すのは、酒場文化研究所所長の坂嵜さん。

ご自身もおよそ20年来のキャンパーである坂嵜さんは、キャンプの際にはペットボトルに日本酒を詰め替えて現地で熱燗を楽しんでいるそう。キャンプに持って行く道具は、お酒を温める「ちろり」と呼ばれる専用の容器に加えて、鍋の中の温度を測る温度計とおかんメーカー、さらにシングルバーナーを使用しているそうです。

キャンプで使う熱燗セット
  1. そんな坂嵜さんに、まずは熱燗のお酒選びについて伺いました。

  2. 「最近は冷やして飲む、華やかな香りが特徴のフルーティな日本酒が人気ですが、そうしたお酒は熱燗にするとバランスが崩れ、そのポテンシャルが活かしきれないこともあります。熱燗に向いているのは香りが控えめで落ち着いた味わいの“純米酒”。要冷蔵と書かれていないものを選ぶのがおすすめです」

  3. 熱燗にしても失敗しにくいと言われる純米酒。酒店などで入手することができますが、おすすめの地酒について聞いてみると意外な答えが返ってきました。

  4. 「良い地酒が手に入ればベストですが、どこでも買いやすいワンカップや菊正宗の紙パックなどでも十分に楽しめます。日本酒の伝統や歴史をずっとつないできたのは大手のメーカーさんです。技術力が高く味も安定しているので、安心していただけます」(坂嵜さん)
  5. ただし、購入時には裏面の原材料欄をチェックする必要があります。

  6. 「入手しやすい日本酒の中には、糖類や酸味料などの添加物が入っているものもあります。添加物は少ないに越したことはないので、美味しい燗酒を楽しみたいなら、純米酒か醸造アルコールのみ添加のお酒を選びたいですね」(坂嵜さん)

熱燗を付けてみよう

【用意するもの】
・燗付け用鍋
・ちろりや徳利、厚手のカップなど
・酒器(徳利、お猪口)
【あると便利なもの】
・温度計(お湯用・お酒用)
・マドラーなど

①鍋の中のお湯は80〜85℃程度に沸かしてキープします。
②ちろりや徳利などに日本酒を入れる。

日本酒をちろりに入れる

③②を6〜8分ほど湯煎で温めます。温まり方や時間は、気温や環境などによっても変化します。途中で少し飲んでみてOKなので、自分にしっくりとくる温度帯を舌で感じたいものです。

熱燗を付ける

④坂嵜さんのおすすめは65℃程度。お燗が付いたらお猪口に入れて出来上がりです。

熱燗を注ぐ

「ポイントは鍋の中の温度をしっかり上げて、高温で燗付けをすることです。熱燗にすることで、冷やのままでは閉じ込められている旨みを開くことができます。温度計を使うと、正確に温度を測れるだけではなく、温度の変化による味の違いも楽しむことができます

実際に飲んでみると、胸の辺りからゆっくりと熱が体全体に広がり、ポカポカしてきます。まるで温泉に入っているような、リラックスした気分になり、熱燗のポテンシャルに感動しながら、気づけば杯を重ねてしまいました。

熱燗の楽しみ方いろいろ

「お酒によっては、60℃くらいできちんと味が開くものもありますが、まだ物足りないと感じるものも。飲むときの温度にもよりますが、しっかりと温めてあげることで旨みを引き出すことができます」(坂嵜さん)

70℃くらいまで上がってしまっても大丈夫ですが、アルコールの沸点は78.3℃です。それを越えてしまうとアルコールが気化してしまい、風味が大幅に変わってしまうので注意しましょう。ここでは熱伝導率の良い、錫製(すずせい)のちろりを使用していますが、アルミ製などの軽くて安価なものでも大丈夫です。

また徳利に入れて、そのまま温めてもいいですが、ある程度温度が上がったら温度ムラができないようにマドラーなどで軽くかき混ぜるといいでしょう。ワンカップなら、蓋を開けてそのまま湯煎の中に入れ、燗付けしてOKです。

ぬるかん

この日使用した「おかんメーター」には、あつかん(50℃前後)、上かん(45℃前後)、ぬるかん(40℃前後)の3種類がありましたが、この他に、30℃前後を日向燗、35℃前後は人肌燗、55℃前後は飛び切り燗と呼ばれます。

また一度、お燗したお酒を冷ましたものは「燗冷まし」と呼ばれ、一切温めていない冷やとはまたひと味異なります。

「今回は熱めの湯煎からお燗を付けましたが、時間をかけてゆっくりと温度を上げていくほうがよりふくらみが出ます」と坂嵜さん。

飛び切り熱く燗付けするのもオススメですが、温度帯によって表情が変わるのもまた熱燗の魅力です。さまざまな味わいの変化も楽しみながら、今年の冬キャンプでは、自分好みの熱燗を探してみてはいかがでしょうか。

関連リンク:
冬キャンプを快適に過ごすポイントを専門家に聞く

この日使用したお酒

この日、燗付けしていただいたお酒は以下の通りです。

玉櫻と竹鶴
  • 「玉櫻(たまざくら) 純米 五百万石」(玉櫻酒造/島根県)
    味が開きにくいので、しっかりと温めたい一本。冷やのままだと硬さを感じますが、熱燗にすることで熟成感と米の旨みに加え、軽やかな酸が楽しめます。

「清酒竹鶴 純米」(竹鶴酒造/広島県)
熱燗好きに熱烈に支持されている一本。旨みも酸も感じられる骨太の味わいで食中酒としての評価が高く、肉料理や揚げ物などとも相性抜群です。


坂嵜透氏

●教えてくれた人
酒場文化研究所所長 坂嵜 透さん

燗酒や日本酒、居酒屋について探究する酒場文化研究所。「日本人が自国の伝統文化である燗酒を普通に楽しめる場所」として開いたのが「純米酒 三品」と2021年にオープンさせた「えんらい」(いずれも東京都渋谷区)という酒場。東京の燗酒文化を牽引する専門店の一つ。


コメント

このサイトはhCaptchaによって保護されており、hCaptchaプライバシーポリシーおよび利用規約が適用されます。