「車中泊なら自分が好きなものを詰め込んで移動できる」 ヘンミマオさん
車中泊人気が高まっている。いまテント泊している人の中にも、車中泊が気になっている人も多いのではないだろうか。そこで今回は車中泊の専門家である、アウトドアフリーランスのヘンミマオさんにその魅力と可能性について話を伺った。
車中泊の魅力とは
車中泊の魅力とは
「アウトドアフリーランス」という肩書で、車中泊関連のイベント企画やキャンプのインストラクターを行っている、ヘンミさん。まずは車中泊の魅力について聞いてみた。
「車中泊の魅力はたくさんありますが、1つは鉄に包まれている、という安心感ですよね。テントだと風の音やネコが歩く音、朝の光などで起きてしまうことがけっこうありますよね。また、テントだと雨風が吹くと『大丈夫かな』と不安になりますが、車ならそこまで気にする必要もない。それは魅力だと思います」
テントとの比較以外に車中泊ならではのメリットもある。
「先日、金沢に4泊5日の車中泊旅行に行きました。宿を予約する手間も宿代もかからないというのは、もちろんメリットの1つですが、なにより自分の好きなものが詰まった、いつもの空間で、そのまま移動するのでリラックスできましたね。そのうえで場所をあちこち変えられるので、新鮮な気持ちになりました」
アウトドアとの出合い
アウトドアとの出合い
利用イメージで最適なモデルを考える
ヘンミさんの車を拝見させていただくと、そのセンスの良さに驚いてしまう。それが培われたのは、かつて勤めていた職場にあるという。
「以前は大手リユースショップのアウトドア専門店で、店舗責任者として働いていました。普通のアウトドアショップの店員だったら、最新のアイテムを取扱いますが、リユースですと、古いアイテムや珍しいアイテムなど過去から現在まで、あらゆる製品が買い取り希望として持ち込まれます。そこで使い方を調べたり、テントであれば状態を見るために実際に広げるうちに、製品知識が付きました。それと売り場づくりも自分で行っていたので、そこでコーディネートについても学びましたね」
アウトドア専門店で働くヘンミさんと車中泊の出合いは、コロナ禍がきっかけだったという。
「もともとキャンプ泊はしていたのですが、コロナ禍で休業になり、自分が勤めていたショップも休業になりました。そんな時にSNSを見ていたら海外の方がバンを車中泊仕様にDIYしているのを見かけました。もともと僕は家中の家具をDIYで作っていたこともあり、自分にもできるのではと思い、中古車を購入して、そこから一気に作り始めました」
車を車中泊仕様に変更する際に、ヘンミさんにはこだわりがあった。それは、スタイルを1つ設けて自分らしさを出すことだった。
「僕は古着が好きだったこともあり、キャンプをしていた時のギアもアンティーク調やウッドを使った道具を選んでいました。全体をそのトーンに統一するために、改めてアイテムを追加して、ベッドを作って寝心地を追求したり、自分が選んだそれらの道具をバンに詰めて、一緒に出掛けられるんだ、と思うとワクワクしましたね」
車中泊の室内が形になった後も、実際に使ってみて気になるところを変えてと、何度も模様替えを繰り返しながら、ようやく今の形に落ち着いたという。
独立後の気になる日常生活は?
独立後の気になる日常生活は?
2021年、それまで勤めていた会社を退職し、アウトドアフリーランスとして独立。現在は出身地である埼玉県秩父市でかつて祖父が住んでいた家に住み、妻は仕事の関係で東京にいるため、東京と秩父での2拠点生活を送っているという。
そんな彼の日常はどのようなものなのだろうか。
「土日の多くは埼玉県ときがわ町にあるキャンプ民泊『NONIWA』でキャンプインストラクターとしてお客様のサポートを行っています。週に2日はお休みにして、それ以外の日はメディアの撮影対応やコーディネートのお手伝いなどをしています。たいていは現地に行って仕事をして、そのまま車中泊するので、秩父の自宅に戻るのは週2日くらいですね」
また、ヘンミさんは「VANCAMP JAPAN」の中心メンバーでもある。そこでは、何を行っているのだろうか。
「バンで車中泊をしている方々をインスタグラムなどを通じて集め、そのバンを一堂に並べて展示しつつ、キャンプを行っています。集まってみるとよく分かるのが、例えばワンちゃんを連れている方はその子が安心して餌を食べられるスペースを設けていたり、都会っぽい人だと思って内装を見たら、コンクリート調のDIYがされていたり、とその人の個性が車中泊にも反映されているのが面白かったですね」
車中泊で選択肢の幅が広がった
車中泊で選択肢の幅が広がった
車中泊を始めたことで、ライフスタイルも大きく変化したという。例えば飲み会に行くときにはバンで行き、あらかじめ宿泊できる場所に駐車して、終わったら車で寝ているという。
「以前は終電を気にしたりとか、代行で帰ったりしていましたが、車中泊によってそういうことから解放されたんです。明日、キャンプに行こうとなった時には、前乗りで道の駅に宿泊するとか。車中泊を始めたことで、選択肢の幅がかなり広がりましたね」
車中泊はヘンミさんの日常に組み込まれ、ライフスタイルとして確立された。
「以前、ある方に『このバンはヘンミさんの仕事でもあり、趣味でもあり、家でもあるんですね』と言われて、確かにそうだと納得しました。車中泊はただ車で寝るだけではなく、食も住も趣味の世界も詰まっているから面白いんだろうなと思います」
最後にこれからの目標について聞いてみた。
「独立して、まだ1年ぐらい。できることは全部やってこうという感じですが、まだ探り探りですね。キャンプブームがこれからどうなるかは分かりませんが、実際にインストラクターをしていると、これからキャンプを始めたいと思っている人は、まだまだ多い。そういう方たちに自分の経験を伝えることで、少しずつでも裾野を広げていければと思います」
車中泊をやってみたいと思っている、みなさん。ぜひこの記事をきっかけに一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
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